核医学放射線管理実務に関するQ&A Ver2.0
日本核医学技術学会ホームページで企画した「廃棄物管理Q&A」及び「第1回核医学放射線管理実務セミナー」において出されましたご質問とそれに対する回答をまとめて「核医学放射線管理実務Q&A Ver1.0」とし、公開しておりました。平成14年1月12日大阪において「第2回核医学放射線管理実務セミナー」を開催し、その中で出された質問等を取り入れ、バージョンを更新し、「核医学放射線管理実務Q&A Ver2.0」を作成いたしました。皆様の核医学放射線施設における管理の一助にしていただければ幸甚です。
なお、学会ホームページのQ&Aは今後も継続して実施してまいりますので、遠慮なくご質問やご相談をお寄せください。また、核医学管理実務セミナーは今後も全国各地で開催する予定ですのでふるってご参加下さるようお願いいたします。

質問一覧

Q1:オムツは感染性廃棄物なのでしょうか。  

Q2:放射性物質が付着しているオムツは管理区域で管理すべきでしょうか。  

Q3:個別管理している施設では、出口でも測定確認する必要があるのでしょうか。  

Q4:クリアランスレベルを規定してこの問題に対応することはできないのでしょうか。  

Q5:これまで放射性廃棄物として社団法人日本アイソトープ協会に引き取りを依頼していた廃棄物(例えば、RIが封入されていたバイアル、RI投与に使用したシリンジ、針、三方活栓、ライン)も、今回の措置に基づいて、B.G.レベルに減衰すれば、通常の廃棄物として処理しても構いませんか。  

Q6B.G.レベルまで減衰したことを確認するための測定に用いる放射線測定器は、測定器の種類でどの程度のレベルまで測定する必要があるのでしょうか。  

Q7:外来患者さんの場合は、どうなのでしょうか。  

Q8:廃棄物の測定は、廃棄物(医療)業者が行っても良いのでしょうか。  

Q9:当施設では入院患者のオムツは布製のものをリースして使用しています。この場合も、管理する必要があるのでしょうか。  

Q10:オムツ等の管理については、医療監視で指導・確認されることがあるのでしょうか。  

Q11:現在、ガイドラインやマニュアルに沿って測定・管理されている施設では、放射線安全管理委員会を開いて対応を図っているのでしょうか。  

Q12:核医学では、RIを一旦患者に投与した後は規制を受けないと言われてきましたが、管理をする必要があるのでしょうか。

 

Q13:個別管理で管理漏れを防止する良い方法がありましたら教えてください。

 

Q14:個別管理と出口(集中)管理をどのように選択すれば良いか教えてください。

 

Q15:病院全体の理解と協力がなかなか得られないのですがどのようにすればよいでしょうか。

 

Q16:医療廃棄物を焼却して処理していますが、この場合は、管理する必要がないのでしょうか。

 

Q17:廃棄物業者とはどのように対応していけばよいのでしょうか。

 


上記以外のご質問がある方はこちらへ


Q1:オムツは感染性廃棄物なのでしょうか。

A1:これまで、患者のオムツについて、感染性の廃棄物として取り扱うか否かについては、「感染性廃棄物の適正処理について」(平成4年8月13日付衛環第234号、厚生省健康政策局指導課長通知)により、医療関係機関から発生し、ひとが感染し、又は感染性のある病原体が含まれて、若しくは付着し、又はそれらのおそれのあるものであり、具体的には、患者からの血液、体液、摘出した臓器・組織、排泄物が付着したもの(オムツ等)などが含まれると通知されています。従って、これまで一般廃棄物として取り扱っていた物でも感染性廃棄物としての扱いが必要となるものがあります。

質問一覧へ

Q2:放射性物質が付着しているオムツは管理区域で管理すべきでしょうか。

A2:現在届出ている管理区域内での保管が原則です。ただし、その量などによって、施設内でコンセンサスがとれていれば、必ずしも管理区域内の保管に限定されません。ただし、放射線防護上の問題として、人が常時立ち入らない場所とする必要があります。施設長の判断・責任で保管場所を指定することができます。

質問一覧へ

Q3:個別管理している施設では、出口でも測定確認する必要があるのでしょうか。

A3B.G.レベルを超える放射線が検出される廃棄物を医療施設外に出さないことが原則です。具体的な管理方法として、関連5団体のガイドラインで推奨している出口管理や個別管理がありますが、施設の実情に応じてどちらを選択されても構いません。また、個別管理と出口管理システムを併用されても構いません。ただし、個別管理では、管理漏れが生じることが考えられますので、十分に注意して実施してください。また、管理対象患者の特定漏れやオムツ等の回収指示の引継ぎの確認漏れ等を防止する対策が十分に講じられていれば、個別管理の場合に必ずしも出口管理をする必要はありません。

質問一覧へ

Q4:クリアランスレベルを規定してこの問題に対応することはできないのでしょうか。

A:我が国の関係法令では、一旦、放射性廃棄物とされたものはB.G.レベルまで減衰しても放射性廃棄物として扱わなければなりません。この考え方は、非経済的かつ非合理的であることが考えられます。一方、欧米諸国では、クリアランスレベルを定めて、放射性廃棄物の濃度や密度が一定のレベル(クリアランスレベル)以下であることが確認できれば、通常の廃棄物として処理する考え方を導入している国もあります。我が国でも、原子力安全委員会で原子炉等の廃棄物について、合理的な放射性廃棄物の管理のためのクリアランスレベルの検討が行われておりますが、現在のところ制度化(法制化)には至っておりません。そのため、クリアランスレベルを適用することは現時点ではできません。ただし、核医学等の非密封放射性同位元素を取り扱う施設からの、水、空気については、法令で規定された濃度以下であれば、施設外に排水、排気することができるようになっております。つまり、ある意味のクリアランスが運用されていると言えますが、固体状放射性廃棄物のクリアランスは認められておりません。

質問一覧へ

Q5:これまで放射性廃棄物として社団法人日本アイソトープ協会に引き取りを依頼していた廃棄物(例えば、RIが封入されていたバイアル、RI投与に使用したシリンジ、針、三方活栓、ライン)も、今回の措置に基づいて、B.G.レベルに減衰すれば、通常の廃棄物として処理しても構いませんか。

A5:今回、関連5団体がオムツ等の患者の廃棄物の取扱いについてまとめたガイドラインやマニュアルは、あくまで放射性医薬品を投与された患者のオムツや尿バック等の感染性廃棄物だけが対象です。現在、我が国唯一の放射性廃棄物業者である社団法人日本アイソトープ協会は、感染性廃棄物を引き取ることができません。かといって、感染性廃棄物を施設内に半永久的に保管することもできません。そのために、オムツ等の感染性廃棄物に限って、関連5団体により出されたガイドラインやマニュアルに沿った自主的管理を推奨しています。従って、通常の放射性廃棄物で、これまで社団法人日本アイソトープ協会に引き取りを依頼していた廃棄物は、今回のガイドラインやマニュアルの対象に含まれておりません。社団法人日本アイソトープ協会の引き取りの対象になる廃棄物には、RI投与に用いられた三方活栓やラインが含まれます。放射性物質で汚染された廃棄物は、各施設で適切に管理されていることとは思いますが、出口等で慎重な管理をされ、通常の廃棄物の中に放射性廃棄物が紛れ込まないよう更なる努力をお願いいたします。

質問一覧へ

Q6B.G.レベルまで減衰したことを確認するための測定に用いる放射線測定器は、測定器の種類でどの程度のレベルまで測定する必要があるのでしょうか。

A6:市販のサーベイメータを用いて測定しても問題ありません。ただし、測定器の点検を行い、測定が可能かどうかの確認をしてから用いてください。

質問一覧へ

Q7:外来患者さんの場合は、どうなのでしょうか。

A7:今回の関連5団体によるガイドラインやマニュアルは、あくまで入院患者を対象としています。外来患者については、将来的には何らかの指針等の準備が必要と考えます。

質問一覧へ

Q8:廃棄物の測定は、廃棄物(医療)業者が行っても良いのでしょうか。

A8:管理の原則は測定してB.G.レベルを超える放射性廃棄物を施設外に出さないことにあります。そのための測定は誰が行っても構いません。ただし、測定データの確認と施設外に出して良いか否かの判定は医療施設の実務担当者が責任を持って行ってください。具体的には、施設の測定マニュアルの作成、業者への教育の実施をして、測定が確実に行われることが必要と思われます。

質問一覧へ

Q9:当施設では入院患者のオムツは布製のものをリースして使用しています。この場合も、管理する必要があるのでしょうか。

A9:基本的には、B.G.レベルを超えるものを医療施設外に出さないという方針に沿って考える必要があります。従って、布製のオムツも同じ対応が必要です。病院等の事情によって異なるとは思いますが、核医学施設でオムツを使用する患者さんについては、紙オムツに切り替えることをお勧めます。

質問一覧へ

Q10:オムツ等の管理については、医療監視で指導・確認されることがあるのでしょうか。

A10:平成13年度の医療監視では、必ず確認すべき事項に、オムツ等の廃棄物の管理状況は入っていないようです。ただし、医療監視の指導・確認内容は地域や担当者によっても異なります。また、一部の地域では、指導というかたちではなく、管理しているのかどかの確認を行っているようです。さらに、「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行について」(平成13年3月12日付医薬発第188号 厚生労働省医薬局長通知)において、「放射性同位元素を投与された患者に伴う固体状の汚染物については、適切な放射線測定器を用いて測定することにより、放射線管理に関する適切な取扱いを行うこと。」と記されております。従って、医療監視で指導・確認されるかどうかに係わらず、医療施設独自の取り組みとして、関連5団体のオムツ等の取扱いに関するガイドラインに沿った適切な措置を講じていただくようお願いいたします。

質問一覧へ

Q11:現在、ガイドラインやマニュアルに沿って測定・管理されている施設では、放射線安全管理委員会を開いて対応を図っているのでしょうか。

A11:すべての施設が施設内の放射線安全管理のための組織(例:放射線安全管理委員会)での検討を経て対応を行っているかどうかはわかりませんが、傾向として、放射線安全管理委員会や、これに準ずる委員会を開き、医療施設全体の問題として対応している施設が多いようです。必ずしも、医療施設全体として取り組まなければならないということはありませんが、場合によっては廃棄物の引き取り拒否や関係機関へ通報されるリスクがあることも考えられますし、また、看護婦や事務職員の理解を得る必要がありますので、少なくとも施設責任者及び関係者の認識を深めるための啓発が必要と思われます。

質問一覧へ

Q12:核医学では、RIを一旦患者に投与した後は規制を受けないと言われてきましたが、管理をする必要があるのでしょうか。
A12:これまで、核医学では、患者に診療用放射性同位元素(放射性医薬品)を投与した後は法的な規制を受けないと間違った解釈が行われてきました。これについては、施行規則及びこれまでの通知等にも示されておりません。従って、この間違った解釈を払拭する必要があります。この間違った解釈のために、患者にRIが投与されていることやその被ばく影響が一般的に看護師さんたちに徹底されていない状況を生み出す原因にもなっています。そのため、今後は、これまでの核医学の管理を抜本的に見直し、患者さんの人権や有用な核医学診療を合理的に受ける権利を考慮した上で一般人の安全も担保できる管理基準の策定が必要になっております。このような状況下にあって、当学会や日本核医学会が中心に関係機関とも協議しながら将来的な基準を提案すべく邁進しているところです。
 以上のように、核医学管理の抜本的な見直しが必要でありますが、RIを投与された患者のオムツ等の問題が社会的な問題にも発展しかねない以上、これまでの管理がどうであったかに囚われず、まずはガイドライン及びマニュアルの管理を実践することが肝要です。

質問一覧へ

Q13:個別管理で管理漏れを防止する良い方法がありましたら教えてください。
A13:オムツ等の回収が必要である旨を記した指示書のようなものをRI投与時に当該患者の入院する一般病棟に送付し、その指示書をカルテに綴じておくことによって、看護スタッフによく解るように工夫している施設もあるようです。この指示書は、綴じ穴を開けておき、カルテに綴じやすいようにしておくと便利です。また、回収の必要性が無くなった場合に、指示書のみ破棄できる利点があります。

質問一覧へ

Q14:個別管理と出口(集中)管理をどのように選択すれば良いか教えてください。
A14:個別管理は、対象廃棄物がオムツ以外のこともあるため、どうしても管理漏れが生じやすくなります。また、個別管理を行うには、一般病棟の看護スタッフ等の理解と協力が不可欠になります。個別管理を行う上での関係者の啓発には時間がかかる施設が多いものと思います。そのため、どちらの方法でも可能な場合は、出口(集中)管理を行うことをお勧めします。Q3でも述べたように、個別管理でも、管理漏れが生じないように、十分な工夫と対策を行えば、管理することは可能ですが、看護スタッフや患者(家族を含む)の理解と協力を得て、オムツ以外の廃棄物についても管理漏れが生じないように十分な注意が必要です。

質問一覧へ

Q15:病院全体の理解と協力がなかなか得られないのですがどのようにすればよいでしょうか。
A15:この問題への対応は医療施設のリスク管理そのものです。廃棄物業者から関係機関(例:文部科学省、警察署)へ通報され公開される(新聞等に掲載される)可能性があることを病院幹部に理解してもらうことが先決です。そのためにも、医療施設内の放射線安全管理のための組織(例:放射線安全管理委員会)を開催し、そこでまず検討されることをお勧めします。平成13年4月1日に医療法施行規則が改正されることに伴い、Q10に記した厚生労働省から出された第188号通知では、「病院又は診療所における放射線管理体制を明確にし、放射性同位元素等で汚染された物を取り扱う実務者の中から責任者を選任すること。」と記しております。A11の事態(廃棄物の引き取り拒否や関係機関へ通報されるリスク)を正確に説明すれば、病院管理者は、きっと理解されるものと思います。

質問一覧へ

Q16:医療廃棄物を焼却して処理していますが、この場合は、管理する必要がないのでしょうか。
A16:RIが混入した廃棄物を焼却するためには、医療法施行規則第30条の11(廃棄施設)第1項第4号に規定する設備を設けて、届出が必要となります。従って、B.G.レベルを超える放射線が検出される物が混入する可能性がある医療廃棄物等を届出されていない焼却装置で焼却する場合には、焼却する前に放射線測定を行い確認する必要があります。
 なお、念のため申し添えますが、焼却したからといって、当該廃棄物から放射線が検出されなくなるわけではありません。

質問一覧へ

Q17:廃棄物業者とはどのように対応していけばよいのでしょうか。
A17:廃棄物業者が測定するようになったのは、再利用する鋼材等の中に、密封RIが混入する事件が頻発したことに端を発しています。そして、高炉メーカーはRI混入後の社会的・経済的影響が大きいことから、再利用する鋼材等を納入する廃棄物業者に放射線の測定を依頼するようになったためです。そのため、廃棄物業者は、仕方なく、その規模によって、ゲートモニターを設置したり、サーベイメータを購入して対応にあたっているのが現実です。つまり、今回の問題については、廃棄物業者側も困っているというのが実情です。
従って、この問題の対応にあたっては、場合によっては、廃棄物業者とコミュニケーションを十分にとることも考えるべきです。

質問一覧へ


文責:木下富士美(日本核医学技術学会廃棄物問題担当)

   渡辺  浩(日本核医学技術学会電子情報化推進検討委員会)

Q&AコーナーTopページへ

質問受付へ