巻頭言
核医学検査技術研鑽のフィールド
渉外担当理事 木下富士美(千葉県がんセンター)

房総半島の太平洋に面した気候温暖な田園都市を標榜している田舎町に住み着いた。

診療放射線技師として既に15年が経過していた。田舎町ではあるが環境的には温暖で自然豊かで非常に暮らしやすい町でもある。住み始めからしばらくし、近所の農家から畑を借り趣味として家庭菜園を始めた。50坪程の畑であるが、適度な運動量によるストレスの発散、生ゴミの有効利用、収穫の喜び等々、結構のめり込んで早20年となる。

鍬1本で畑を耕し、肥料を入れ、畝を作り、種を蒔き、雑草を取り、追肥、害虫駆除など毎日とは言わなくても、日常の手入れによって収穫する野菜の味、草花の色が一段と鮮やかになってくる。これからの季節、とりたてのトウキビ、枝豆、キュウリ、ナス、ピーマン、トマト等、夏野菜の収穫が楽しみである。しかし、最近小作人(家内)の反乱があり、作業全てを自分一人で行わなければならず、来年は小型の耕運機を導入しようかと密かに計画を練っている。

さて、日本核医学技術学会第23回総会が金沢市においてすばらしい企画、そして90題もの過去最多の一般研究発表がなされ、大勢の会員が参加し、山田正人大会長の下で盛会裡に開催された。ご準備頂いた実行委員会各位、ならびに関係者各位に心から感謝を申し上げる。

なお、次回第24回総会は福喜多博義理事を大会長として、千葉県では始めての総会が開催される。大勢の皆様のご参加を期待している。

日本核医学技術学会も創設以来、早、四半世紀を迎える。高坂、金尾歴代の学会長をはじめ、理事役員の方々の献身的な努力(私の農作業とは比べ物にならないが)、荒涼としていたわが国の核医学検査技術分野に鍬をおろし、耕し、畝を作り、種、苗を植え、肥料を施し、多忙な日常診療業務をされながら、今日の日本核医学技術学会の良き土壌を作り上げてきたその努力と歴史が存在することを忘れてはならない。まさに、頭の下がる思いである。しかし、残念ながら現状の会員数は800余名と少数である。先般発行された会員名簿から推測すると、延べ会員数は2600名にも達する。会員が少ないのは核医学技術者集団から構成される本学会の大きな悩みの一つである。原因として、ローテーションや配置換え等、核医学専従での勤務態勢が整わない事情が上げられる。
 だが、学会の活力は会員の数に比例するとは限らない、要は個々の会員のパワーにある。学会は強制され入会するものではない、特に若い会員の皆様に申し上げたいことは、会員となられたからには受け身ではいけない。核医学検査技術に携わる者(臨床現場の医療技術者、検査機器の開発、研究、製造に携わる技術者、医療技術者を育てる教育者、放射性医薬品を製造、研究、販売に携わる方々)、医療人の責務として日々の研鑽が必要である。学会は全会員の研究発表の場であり、会員は目的を同じとする技術者、研究者の集まりである。会費納入の義務があり、その義務を果たしたからには当然権利が発生する。学会活動の中で率先してその権利を主張すべきだと思う。
是非、日本核医学技術学会を実り多い皆さんのフィールド(畑)として大いに活用にして頂きたい。核医学専門技術者認定制度、国際交流・研修派遣者制度、論文投稿、優秀論文表彰制度、研究発表の場等々まだまだその権利を十分に行使されている会員は少ない。

本学会の諸制度を積極的に利用、活用されることを節に希望する。

2003/7月記)