第23回日本核医学技術学会総会学術大会印象記
社会保険船橋中央病院 放射線部 酒井良介
 雨上がりの7月25日午後、加賀百万石の城下町金沢に到着した。過去数回訪れているがゆっくり観光したことはなく、今回も次期実行委員長という立場から下見を兼ねての参加であった。
 ここ数年核医学が低迷状態であると言われているが、それに反発するかのように過去最高の90演題が集まったことは、核医学に携わっている人たちの強い意思表示のあらわれであることを感じた。第23回総会学術大会のメインテーマに『医療を生き抜く優しい核医学技術』を掲げられたのは、医療の中で核医学に求められる姿を模索していこうという強い意図が感じられた。会場の金沢市文化ホールは立派な建物で、第1会場となった大ホールの広さに驚かされ、第2会場もスペース的には全く申し分がなく、第3会場の円卓会議室はこぢんまりしていて討論を行う上ではふさわしい感じがした。今回ほとんどがパソコンを使った発表であったが、たいしたトラブルもなくスムーズに進行がなされていたのは、裏方ではたいへん気を遣われていたのではと思われた。
 第1日目の午前中は各会場とも熱気のある一般発表が行われており、「よろず相談コーナー」も北陸ならではの実行委員特別企画であった。またランチョンセミナーにはかなりの参加者があったということを聞いた。(私はちょうどこの時間帯は評議委員会に参加していた。)午後からのプログラムは海外招待講演として、前SNMT会長のFrances K.Keech先生が「米国のPET-CTの現状と技師の役割」という話をされたが、有り難かったのは前もってプレゼンテーションするスライド内容を翻訳して資料として配付されたことで、英語が苦手の私でも今どこまで話が進んでいるのかプリントを見ながら把握することができた。実行委員会の何気ない配慮に頷いた次第です。続いて、特別講演?は金沢大学の利波紀久教授に「核医学診療:新世紀の展開」というテーマで、半導体検出器への期待や放射性医薬品の開発展望など核医学の未来を力強く語って頂いた。特別講演?は福井赤十字病院の野口正人先生による「クリニカルパス,医療のIT化は病院に何をもたらすか?」という講演で、クリニカルパス及び医療のIT化としてまずあげられる電子カルテが、どのように病院に導入され、どのように運用するのかを追求することにより、医療の質の向上が図られると述べられた。次に、文化講演は和倉温泉加賀屋会長の小田禎彦氏の「日本一への道のりとその責任」であった。接客と患者さんへの接遇には通じる部分が多く、思いやりを持って接すること・常に努力を惜しまないこと・時代のニーズに対応する柔和な姿勢を持つことなど肝に銘じる話であった。是非、一度は訪れてみたい旅館である。
 懇親会では琴の音色で我々を迎えて頂き、会話が弾みかけた頃に和太鼓の音が会場を響き渡るという、まさに『静と動の郷土芸能』を堪能させて頂きました。懇親会終了後は、場所を変えて千葉からの参加者(ほとんどが次回実行委員)に集まってもらい、来年に向けて結束を高めていた。
 翌日は早朝からワーキンググループ中間報告があり、前夜の疲れを顔に出さないように柳澤学術委員の報告を聞いていた。私がプログラム上で、一つ気になっていたのは、パネルディスカッションの時間帯と平行して行っている他会場での人の集まり具合だったが、開催されていた脳血流セクションには、eZISや3D-SSPに関心のある方が多数集まっていたので心配するには及ばなかった。卒後教育プログラムの基礎講座はどれも興味のあるテーマなので、2つ同時に聞きたいと欲張った考えを抱いてしまうのは私だけでしょうか?ただ40分というのは若干短いような気もしましたが、時間配分などからやむを得ないことと思われた。最後を飾るシンポジウムは「クリニカルPETに期待するもの」というテーマでしたが、座長の米倉先生と杉本先生の進行のもと各シンポジストの話からPETへの期待度が十分に感じられた。特に供給体制やPET/CT装置の開発など、一層現実味を増してきており、間違えなく21世紀の核医学診療の主役になりうると思われた。
 今回550名以上の参加者があって、盛会に終了できたのも、山田大会長,宮崎実行委員長を中心に実行委員の方々のがんばりの成果であり、改めて結束力と行動力に敬意を表したいと思います。どうもご苦労様でした。
 最後に来年のインフォメーションをさせて頂きます。第24回日本核医学技術学会総会学術大会は千葉市で開催されます。私たち実行委員会はすでに動き始めていますが、いくつかの実行委員会企画を考えています。まずは千葉県内にある2社の放射性医薬品メーカーの工場見学会と一般市民を対象とした『PET展』および市民公開講座を予定しています。しかし何といっても演題発表に担うところが大きく、多くの演題応募をお願いします。そして学会開催時には既に学校等は夏休みに入っていますので、家族連れで来られてあの東京ディズニーランドに行かれるのも一つの楽しみではないでしょうか?どうぞたくさんの皆様の参加をお待ちしています。