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The Japanese Society of Nuclear Medicine Technology

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良質で安全・安心な核医学技術を提供するために
−本学会の目指すべき道と役割−

           日本核医学技術学会 理事長 渡邉  浩


 平成22年度より本学会の理事長に就任いたしました。本学会ならびに核医学の発展のために粉骨砕身して励む所存ですのでよろしくお願いいたします。

 さて、本学会が目指すべき道や役割は、核医学検査を受ける患者さんや検査データを受け取る診療科医の立場に立てばよく分かるのではないでしょうか。核医学検査を受ける患者さんにとっては、良質な核医学検査を安全・安心に受けたいと思うのは当然のことです。“良質”や“安全・安心”の基礎となるものは専門的な知識・技術に他なりません。そのため、専門的な知識・技術の普及やその習得機会を増やしていくことが必要です。また、専門的な知識・技術を有する者を認定する制度として核医学専門技師制度が発足しています。ただし、専門的な知識・技術の習得に対するインセンティブをつけたり、核医学専門技師制度を維持していくためには核医学専門技師を取得した技師やその技師が所属する病院に何らかのメリットが必要と考えております。従って、本学会は核医学専門技師認定機構やこれを構成する他の学会や団体とも協力して、核医学専門技師の社会的な評価の向上を目指す必要があります。これによって、技師のレベルアップ ⇒ 良質で安全・安心な核医学検査 ⇒ 核医学の発展 という連鎖を築いていきたいと考えております。ただし、社会的な評価は簡単に高められるものではなく実績を積むと共にエビデンスを構築していく必要があります。

 また、核医学は他の検査技術では困難とされる臓器の機能や病態生理を画像化できる検査法として世界的に発展してきましたが、診療科医からは病院によって画像そのものや検査データの提供方法が異なるなどCTやMRIに比べて分かりにくいとも言われています。このような中、厚生労働省は平成22年4月30日付の局長通知において、「画像診断における読影の補助」ならびに「放射線検査等に関する説明・相談」において技師を積極的に活用するよう提言を行いました。これらのことを総合的に勘案すれば、核医学の検査データの明瞭化と有用性の周知について本学会の取り組みが必要であることは明白です。本学会は以前より核医学検査の標準化に取り組んでおり、これらの活動と併せて新たな取り組みが必要になってきます。また、読影の補助に積極的に関わることによって診断医の立場に立ち、再現性があり、なおかつ診断し易い検査データの提供方法等を再考する機会になると考えています。ただし、読影の補助については日本核医学会の先生方の支援も必要と考えております。

 一方、核医学が放射性同位元素(RI)を利用する検査法である以上、患者や国民の安全を担保していくことも本学会の重要な役割です。特に、患者のQOLの低下を抑えつつ医療費の低減にも繋がるRI内用療法をますます普及させていくためにRIと社会との共存に貢献していく必要があります。最近では、サイクロトロンの利用に伴い生ずる放射化物の安全管理やクリアランス制度における合理的な管理基準の策定も大きな課題になっています。

 このように、国民に良質で安全・安心な核医学技術を提供し、核医学をますます発展させていくためには本学会の更なる活動が必要であり、理事、監事、評議員、事務局員ならびに会員の皆様と一体となって取り組んでいきたいと考えておりますので、今後もご理解とご協力を切にお願いいたします。